メテンプサイコーシス2010-08-01


自分が、死んだってことは、まあわかった。
でも、それがどういう死にかただったかは、思い出せない。

トランプだと思った。
僕の人生は、トランプに似ていると。
何枚もあるトランプのカードが次々とテーブルに投げられていく。
でも、前のカードがなんてカードだったか、いちいち覚えていないんだ。

ついに最後のカードが投げ出される。
それで、僕の人生はおしまい。

よく見ると、トランプのカードは全部、裏面だ。
今までのことなんて、そんなふうに、なんだったのか、さっぱりだ。

で、僕は死んでどうなったか。 魂なんて、簡単な言葉で表現できるようなもんじゃない。

死んだとわかったのは、生きていた時の体から、遠ざかった時だ。
ここまでは、よくある話。
だから、なんとなく、それらしいなあと思った。

かさぶたを取る感じで、僕は肉体から離れた。
そして、僕は自分を見下ろした。
この時は、まだ生きていたんだろう。

でも、次の瞬間、僕の魂と呼ばれる塊はバラバラになった。
ひとつの水滴が、地面に叩きつけられて、いくつもの水玉になって、
消えるみたいに。

僕は、いくつもの水玉になって、他のいくつもの水玉と合わさっては
また、離れた。
それを何度も繰り返しているうち、僕は、どこまでが僕自身で、どこからが僕じゃないのか、わからなくなった。

もし、生まれ変わりがあるとしたら、それは僕だけが生まれ変わるんじゃない。
あらゆる時代の、あらゆる人間が、何人も何人も合わさって、
そして、ひとつになる。

生きていると思ってた世界は、その過程にすぎなかった。

でも、なんでだろう?
そこに、どんな意味があるんだろう?
もしかしたら、意味なんてないのかもしれない。


どうでした?
ブログ村のランキングへ参加しております!
ブチッ!と、クリックお願いしま~す。
  ↓
にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

コメント

_ tatsu ― 2010-08-02 00時36分59秒

むむ~、哲学の世界ですな。
人生とは何ぞや?
今夜ゆっくり寝ながら考える事にします。

_ 矢菱虎犇 ― 2010-08-02 01時21分18秒

僕は「死」というのがすごく怖いんですけど、
案外「死」ってのはそういう感情を超越した絶対的な現象だと思うんです。
こういう別次元の再生みたいな話を読むと、まさにそういう感じがしてきます。
でも、やっぱり老いや死っていうのに不安はありますけど・・・

_ 儚い預言者 ― 2010-08-02 18時16分34秒

  過程の未来に、錯綜された過去を紡ぎ出しながら、経過の時間はいつまでと問う。私になったのは、秘めやかな潤いの吐息ではなかったのか。拓かれた夢の跡、試されなかった歓びを懐古して、向かわざる意味を齎す。
  ときめきと煌めきの中、生死は配役され、いのちと祈りに舞い、偶された現実の時間を創造して、永遠との木霊を響かせる。

    ためされて
    よろこびゆめの
    はかなくも
    まいするきらめき
    ときめきとわの

  蓋然の未修を嗤うも、脱ぎ捨てられた記憶は、ただ夢の跡を追うばかり。一時との邂逅は、涙の落ちた乾いた塩辛さ。豊潤な意味と、濡れる喜びが天に散っていった。


  通り過ぎる想いは儚くも、凡ての時空の断面を含みながら、この時に愛が流れる。慈しみの風が麗しく挨拶して、悲しいほどの上気を感じ、赦しの大いなる祝福を、受け取ると云う奉仕の意味を、小さな胸の奥でいつも共振しているのを静かに聴いていた。

_ tatsuさんへ ― 2010-08-02 19時28分58秒

死ぬのはイヤですねえ。
できることなら、一生、死にたくないんですけど(笑)
もし、死ぬとしたら、酒飲んで笑いながら急に死にたいもんですねえ。
って、ダメか。。。

_ 矢菱さんへ ― 2010-08-02 19時32分02秒

死ぬのは、当然怖いし、イヤなんですけど
できれば、水死とか圧死とかでは死にたくないですね。
あと、地震でなんかの下敷きになったりとか、焼け死んだり、
そうそう、それから、いろんな苦しい治療法を試しても助からなくて
もがき苦しみながら死ぬとか、そういうのは、ゼッタイごめんです。
やっぱ、ボケるだけボケて、なにがなんだかわからないうちに死ぬのがいいのかなあ・・・。

_ 儚い預言者様へ ― 2010-08-02 19時35分20秒

ですから、セックスってのも、死の疑似体験みたいなもんでしょうか?
「逝く~!」って言うじゃないですか?
その感覚なんでしょうけど、そういう意味からしたら、ボクは、三途の川へも行ってないじゃないでしょうか(笑)
臨死体験、してみてえー!

_ りんさん ― 2010-08-02 20時35分32秒

自分の死を冷静に分析してるんですね。
案外、魂になってからの方が、よくわかるものかもしれませんね。
哲学的でいいお話ですね。

_ おりんさんへ ― 2010-08-02 21時23分58秒

普段は哲学しないんです。
昔の人ってのは、すごいなあと思います。
だって、ゼロから人間の生き死にについて
答えを出そうとするんだから。
まったくゼロの状態から何かを考えたことって
ないですねえ、そういえば。。。

_ もぐら ― 2010-08-04 15時29分38秒

なんだか すごくわかるような気がします。
「あぁ、そうだ!死んだらこんなふうに なにか気体みたいになって、
ふぅぅぅ・・・って消えてしまうんだ。」って。
だから、死体って何度見ても不思議な気がするんですよ。

私は死んだら もう二度と生まれ変わりたくないんです。
また生まれてくるなんて めんどくせー!絶対イヤ!

_ もぐらさんへ ― 2010-08-04 21時48分26秒

生まれ変わりって、あるんでしょうかねえ?
ボクとしては、ないって方に一票なんですけど、
そういう考えは、世間体が許しません。
幽霊もいない。
生まれ変わりもない。
それが正しいか、正しくないか、誰もわからないわけなんですけど(笑)

_ 銀河径一郎 ― 2010-08-06 21時50分56秒

地球外生命にお伺いを立てるとこの話みたいに答えが返ってくるのかもしれませんね。
肉体の束縛を離れた意識は自他の区別がなくて渾然一体としてるのかもしれません。
道理で全国の小学生が言い張るわけだ。
「俺なんか徳川家康の生まれ変わりだぞ」
「俺なんか石川五右衛門で、ルパン三世はまぶだちだぞ」
「俺なんかドラえもんの生まれ変わりだぞ」
他の一同「えっ!?」

_ 銀河径一郎さんへ ― 2010-08-07 09時15分22秒

魂なんてないと思ってるんです。
幽霊とか、信じてるとなにかとそういう
見えないもののせいにしてしまいそうになるからです。
いなけりゃ、怖くありませんもんね。
ドラえもんの生まれ変わりについていろいろ考えてたら、頭がグニャグニャになりそうですゼ!(笑)

トラックバック