第9話:お願い(『どこかの事件』より)2010-12-20

メリー・クリスマス!クリスマス競作やりましょう!


《第8話:『少年と両親』へ》


サンタクロースは、大きな白い袋を少年の前に置いて、ゴホン! と、咳払いをひとつして、おどけてみせた。
「さあて、プラネタリウムで、お前が願ったプレゼントをあげるぞお!」
「わーい! おじいちゃんは、本物のサンタさんだったんだあ!」
少年は、サンタクロースが置いた袋に駆け寄った。

「おいおい、そんなに慌てちゃダメだ。お前がお願いしたものは、とっても壊れやすいものなんだから」
サンタクロースは、そう言って少年を諭すと、袋の口の結び目をゆっくりと、慎重な手つきで解いた。

少年は、そのあまりにも大切そうな手つきに驚いて、床にしゃがみこむと、サンタクロースのやることを目をまん丸にしてジッと眺めていた。
「さあ、こっちへ来て、そっと袋の中をのぞいてごらん。・・・・・・いいかい、そっとだよ」
サンタクロースは、少年を手招きして言った。

少年は、ぬき足差し足で袋に近づいていくと、目をパチクリさせて、袋の口を掴んだ。
「いいぞいいぞ。そっとだぞ」
「サンタさん、ぼくね、ウインクできるんだよ。ママに教えてもらったんだ。だから、大丈夫。ウインクして、のぞくから!」
そう言って、少年は袋の口をほんの少しだけ開けて、片方の目を閉じて、中を覗いた。

「何が見えるかな?」
「うわあ! すごいや! お星様だ! まあるい大きなお星様だ!」
「そう、プラネタリウムでお前が私にお願いしたものに間違いないだろ? ホッホッホー」
サンタクロースは、大きな腹をユサユサ揺らして満足そうに笑った。

「うん! でも、ぼくがお願いしたものより、ずーっとずーっと大きいや! それに、とってもキレイだ!」
少年は、袋から目を離さずに夢中で叫んだ。

「そうかそうか、そりゃあよかった!」
サンタクロースは、自慢の長い髭をゆっくりと撫でおろした。

「わあ! クルクル回ってるよ! 本物の地球って、こんなに光り輝いているんだね!」
「ホッホッホー! メリークリスマース!」
「ありがとう! サンタさん! ぼく大満足だ!」

「・・・・・・おっと、そろそろパパとママが帰って来る時間だよ。わしからのプレゼントはこれでおしまい」
「じゃあ、サンタさんは、また元のぼくのおじいちゃんに戻っちゃうの?」
「そうだよ。そして、わしが、サンタクロースだってことは、すっかり忘れてしまうんだ」

「そんなのイヤだよ!」
「おお、また始まったの。ダメじゃダメじゃ。これは決まりなんじゃから」
「そしたら・・・・・・また来年、サンタさんになってくれる?」
「もちろんじゃよ。お前が生まれてからずっと、わしはお前のサンタクロースなんじゃから」
サンタクロースが、そう少年にささやいた。

「この地球は、どうなるの?」
「残念じゃが・・・・・・元あったところに返してこなきゃならん」
「・・・・・・わかった。だけど、もういっぺんだけ、最後に見せてよ! ね? いいでしょ、サンタさん」
「おお、いいとも」

少年は、サンタクロースの不思議な袋の中をウインクしながらそっと覗いた。
「ぼく、絶対に忘れないよ。忘れるもんか! だって、だってこんなにピカピカして、キレイなお星様なんて、どこにもないんだもの!」
少年は、頬を真っ赤にして叫んだ。
暗闇の中で、イルミネーションのように光り輝く地球が、クルクルといつまでも回り続けていた。


≪つづく≫

『はじまり』は、こちらをクリック


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コメント

_ Madam Garden ― 2010-12-20 22時04分03秒

そおいうことだったのか!
最後は来年に続くのかな、やっぱり。

_ Madam Gardenさんへ ― 2010-12-20 22時07分30秒

こんな感じになってしまいましたあ!
どうしよう!
9話でこうなっちゃったら、10話は?

しまったあ!
ガチョーン!

_ tatsu ― 2010-12-21 00時05分56秒

サンタの袋の中でクルクル回る地球
なんだか途轍もないスケールの話になってきました。

金団雲に乗って千里を飛んだ孫悟空が釈迦の掌の中に居た
ような感じですね。

_ 矢菱虎犇 ― 2010-12-21 01時16分51秒

うふふふ、スケールでかいなぁ!
そうかぁ少年のウィンクだったのかぁ!
と、勝手に納得しているのでありました。

あ、ブラウザの変更、今のところ良さそうです。
どのブラウザも一長一短あってなかなか全部いいってのはなさそうですね。(と、知ってもらっているつもりで喋っていますが、僕は今晩スレイプニル→IE→GoogleChromeと、ブラウザを三つも替えたのですよ。ブラジャーを三つ付け替えたんじゃないっすよ)

_ tatsuさんへ ― 2010-12-21 12時14分29秒

サンタにもいろんなサイズがあるかもしれないっていうのが発想の原点だったんです。
プラネタリウムの老人と孫の舞台が地球だとはどこにも書いてないので、そのへんのフェイントってわけです。
飛べ!孫悟空!

_ 矢菱さんへ ― 2010-12-21 12時21分43秒

謎の目の処理をどうしようかって考えてて、できるだけどうでもいいものにしたかったんですよ。
で、ウインクっていう着地を試みてみました。
なんて言いつつ、あと1話残ってるんですけど、どうすっかなあ(笑)

ブラウザの件、ボクには正直、チンプンカンプンなんですが、ボクの妻ならきっとわかってくれると思うので、今夜聞いてみま~す。

たぶん、ワコールだと思うんですけど。

メリークリスマス!

_ haru ― 2010-12-21 19時33分50秒

「サンタクロースなんていない」と言っていた子どものおじいさんが
本物のサンタさんだったとは。。。
つい、惑わされないゾーって読んでいて、気がつくとお話の世界に
もう9歩も入り込んで……
えっ!地球はサンタクロースの袋の中に?そして、片方の目が
地球を見ている??!!ということは、だから地球は真っ暗??
わぁ~早く次が読みたいよぉ~!!
おあずけされる犬の気持ちがよ~く分かりますねぇ。

_ haruさんへ ― 2010-12-21 20時35分19秒

全話に渡ってお付き合いいただきありがとうございます!
あと1話!
しかし、まさかサンタさんの袋に地球が入ってたとは!
そりゃ地球も真っ暗闇ですわなあ(笑)
不倫の行方はどうなるのか?
Kはどこへ行ったのか?
私は何を見るのか?
老人と孫は?
全てが中途半端なまんま、怒涛のエンディングへ!

_ りんさん ― 2010-12-21 23時58分02秒

一度コメント書いたのですが、消えちゃったみたい。
すみません。もう一度書きます。

なるほど。暗闇の理由がわかりました。
可愛いですね。意外でした。
まだ謎が残ってますよね。
楽しみです^^

_ おりんさんへ ― 2010-12-22 12時09分22秒

>まだ謎が
えーと、あと、残る謎は
いつ最終話をアップするかってことですよね?(笑)

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