橋本 瞳(34歳)2011-08-10


【朝】

【昼】


ああ、もううんざり!
このどんよりとした、活気のない会社。
出版社ってもっとガヤガヤしてていいんじゃない?

いかにも零細企業ですっていう空気が充満してる。
たしかに、最近ウチの会社、ヤバイって噂が流れてるけど、
なんなの?
あの社長の顔。
死んだほうが、イキイキしてんじゃない?

「橋本さん、お願いがあるんだけどな」
「竹之内課長・・・・・・」
ま、まさか結婚したばっかりの竹之内課長が、もう不倫願望?
やっぱり、若すぎたんだわね、奥さん。
アタシくらいの熟した感じがいいんだわ。

「実は、頼みたいことがあって」
いよいよだわ。
でも、カラダ目当てだったら・・・・・・。
いいわ。
若い奥さんより、アタシを選ぶっていうなら。

「なんでも言ってください」
「新しい企画があってね」
「え? 企画?」
「うん。雑誌の。・・・・・・結婚しない独身30代の女子力っていうヤツなんだけど。その記事、橋本さんに書いてもらえないかな?」

「・・・・・・独身女子力?」
バカにしてんの?!
まったく!
自分は、新婚だからって!
やるわよ。
引き受けるわよ。
ちくしょう!

「竹之内課長、やりますよ、それ」
「ありがとう。やっぱりこういうのは、現役じゃないとね」
殺す!
竹之内!

ああ、ムシャクシャする〜!
このまんまじゃ、どうにもなんないわ。
速水君を今夜、誘っちゃおうかしら。

「速水君!」
「なんですか?」
「今夜なん・・・」
「ああ、橋本先輩。俺は無理ですよ、食事とかそういうの。俺には愛する人がいるんです。その人を悲しませたくないですから」

「あら? 速水君って付き合ってる人いるんだっけ?」
「いえ、まだですけど。必ず付き合ってみせます」
「そ、そう。がんばってね」

やっぱ、社内恋愛はバカだ。
世界が狭すぎる。
見てよ、戸塚のあのボケーっとした顔。
幸せの絶頂って雰囲気じゃない。

くやしい!
「戸塚さん。アンタね、社長の予定・・・・・・ここ、広告会社の挨拶がブッキングしてるじゃない! どうなってんの? あんた、秘書なんだから、そういうとこちゃんとしてもらわないと。スケジュール管理も出来なきゃ、全然ダメじゃない・・・・・・フン!」

「そ、そんなことないですよ〜。ここの予定は、誰かがいつの間にか勝手に入れたんです。私、知りません」
「・・・・・・知りませんで、秘書が務まるの? 婚約者がそばにいるからって、ボンヤリしすぎじゃない?」

あー、スッキリする〜。
気の効かない女のくせに、なまじ幸福だと、イライラするのよ。

「橋本君、いいんだ。そのスケジュールは、全部キャンセルなんだよ」
「・・・・・・社長、どうしたんですか?」
急に立ち上がって、なんだろう?

「み、みんな! 聞いてくれ! ・・・・・・すまん! みんな、すまん! 今月の給料は、期日までに払えない!」
え?
なに?
なに宣言してんの?

やっぱりこんな右肩下がりの会社で社内恋愛なんかしてたら、共倒れになってたわ。
あぶなーい。
上杉と戸塚みたいに、経済の先が読めないバカは、可哀想ね。

そうだわ。
もう、ダンス教室のミツル先生しかいないわ!
最初から、妥協なんてしないで、本命1本にしておけばよかったのよ!

給料もらえないんだったら、さっさと帰って、ダンス教室行っちゃおうっと。
独身女子力を見せてやる!


【夕】


本日も、読んでいただきありがとうございます。
ヴァッキーノは、にほんブログ村の村民です。
1日1回、ポチッとクリックしていただけたら、大喜びです。
     ↓
にほんブログ村 小説ブログ ショートショートへ
にほんブログ村

コメント

_ 矢菱虎犇 ― 2011-08-10 22時30分52秒

今日、ボクは職場の休憩室でゆっくりしようとしたら、先客があって二人のご婦人がやいのやいの話してるんですよ。一緒に働いている女性が我慢ならないって話題なんですけど、ボクが入っても一向に話をやめる気配もなく・・・結局休憩はあきらめました。う~ん、すんごいパワー。
それをもろ思い出しました。ボクも職場でアレコレ思われていたらコワイなぁ。
それにしても34歳の独身女性にいきなりそういう企画を頼むって、鈍感なのか勇敢なのか、すげ~(笑)

_ 矢菱さんへ ― 2011-08-10 22時37分48秒

早速のコメント、ありがとうございます!
女の人が密室に集まると、怖いですよね。
ボクの下で昔、バイトのおばさんが5人くらい働いていたことがあったんですけど
彼女たちは、すぐに仮想敵を作って密室で悪口や噂話をしているんです。
怖いです。
今日は、そんなおばさんたちのことを思い出しながら書きました。
そしたら、奇しくも矢菱さんも同じような目に遭ってたので、笑いました。

>鈍感なのか勇敢なのか
竹之内さんは、だから若い女性と結婚できたのかもしれませんね。

_ haru ― 2011-08-11 07時42分22秒

あ~!いよいよ秋冬出版社の危機的状況が、小堺社長の口から語られる。
でもさあ、秋冬出版が傾くと随分島には打撃になるよね。社員がこんなに沢山いるとは思わなかった。(10万円の支払いに困っていると言うことは、貨幣価値が未来では北朝鮮並みってことか?)
それに、漫画家の小松裕子さんに、和田周作さん。娘の勤める会社で自費出版しようとしている父親の戸塚警官。
あ、速水さんの恋してる(狙っているの方が的確か?)石野彩子さんのルームメイトが警察官。
橋本瞳さん。男を作るのはかなり難儀やなあ~。。。独身通すか、どんなんでもいい。の2者択一だと思うよ。
だって、いい独身男いなさそう。へへへっ(笑)

_ りんさん ― 2011-08-11 17時03分12秒

あの自殺願望の社長さん、出版社だったんですね。
従業員大変だな~。これから結婚する人もいるのに。
橋本さんは、相変わらずの勘違いぶりですね。
仕事は出来そうだけど。
こういう人、いそうです。

_ haruさんへ ― 2011-08-11 19時33分40秒

haruさんのコメントを読んで、なるほど〜って
いつも感心させられちゃうんですけど、
今回も空間把握がスゴイですね。
そう考えると、この出版社が潰れちゃったら、島の経済に
だいぶ打撃がありますね。
・・・・・・困ったなあ。
となると、
橋本さんと付き合う男性も、限られてきますね!

_ おりんさんへ ― 2011-08-11 19時35分27秒

>自殺願望の社長
そうなんですよ。
この出版社は、どうなっちゃうのか?
社長の運命は!
そして、そんなことお構いなしに
橋本さんは、男を探す!
夕方へ続く!

トラックバック