【朝】

【昼】


ジメジメした梅雨があけて、やっと僕の季節がやってきた。
ギガスポーツも今週末からサマー・バーゲンをやろうかな。
そして、サーフィンの魅力をお客様に伝えるんだ。
僕はサーフィンの伝道師さ！

まずは、店の模様替えだ。
サーフボードをショーウインドーへ出して、目立つようにしてっと。
・・・・・初心者でもすぐに始められるように、セットで売ったらどうだろう？
お手頃価格なヤツを何種類か集めて。
そうだ、ギガスポーツ・オリジナルサーフィンビデオもつけちゃおう。
このビデオは、僕が作ったやつなんだ。
もちろん、主演は僕。

板と、スーツ。
インナーでしょ・・・・・・それから。

「あ、あのぅ。つかぬことをお伺いしますが・・・・・・」
あ、お客様だ。
「はい」
「えーと。ロウソクとかありますか？」
ロウソク？
なんだ？
ああ、板に塗るワックスのことかな？

「ワックスですか？」
「いえ、あの、ロウソクですよ。火をつけると、タラタラと溶けて・・・・・・あ、いえ、キャンプ用の、アウトドアのロウソクです」
「キャンプ用ですか・・・・・・。ウチには置いてないですねえ」
なんだか、変な客だな。
アウトドア用のロウソクって、意味がわからないよ。

さて、板のチェックだ。
ホコリがついてないか。
キズはないか。

うーん。
これなんか、エミリによさそうだな。
今夜は、デートの時、このサーフボードをプレゼントしてやろうかな？
同じ趣味をもてば、エミリの気持ちを少しは理解できるかもしれない。

「ヘイ！　ボーイ！　プリーズ！」
お？
すげえ。
ブロンド美人だ。
ビキニが欲しいんだな。

「はい。どのようなものをお探しでしょう？」
うわあ、クラクラするような香水のニオイ。

「サラノ唇ヲ奪ッテクダサイ。ソシタラ、コノ店デ一番高イモノヲ買ッテアゲマスヨ！」
え？
唇を奪えって言った？
つまり、僕にキスしろと？
・・・・・・ま、まさか。

「えーと、水着ですか？」
「きす・みぃ・ぷりーず！」
うわ！
抱きついてきた！
どうしよう。

「ちょ・・・ぼ、僕には彼女がいますので！」
「彼女ト私ト、ドッチガ魅力アル？」
「か、彼女です」
「馬鹿ニスンナヨ！　モウ、二度ト来ナイヨ！」

なんなんだ？
あの人。
今日は、わけわからない客が多いな。

「おう、兄さんよ。ちょっといいかい？」
「はい」
「サーフィンやると、やっぱモテるんかい？」
お、きたきた。
いい質問。
初心者だな。

「ええ、そりゃあモテますよ」
「マジかよ！」
「もう、モテモテですよ。今日からちょうど、サーフィン初心者の方でもすぐに始められるサーフィンセットをご用意しておりますので、いかがでしょうか？」

「うーん。でもやっぱ、日焼けしてねえと、ダメだろ？　俺、すぐ真っ赤になっちゃうタイプだからさ」
「オイルを塗れば、きれいに日焼けしますよ」
「じゃあ、ちょっと考えておくか・・・・・・」
「よろしくお願いします」


【夕】


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