【朝】

【昼】


社長、またどっかに電話してる。
サラ金かな、あの調子じゃ。
この前も、本土の取立て屋みたいなのと、テレスコープしてたし。

オレと社長でこの出版社を築き上げてきたんじゃないか。
オレは、社長から編集のノウハウを叩き込まれた。
あの頃の、テッペン目指してガツガツ突き進んでた社長の姿は、
どこに行ってしまったんだよ。

あちこち電話して、頭下げて。
見ちゃいられないよ。

この出版社の危機を救うのは、やはり小松先生しかいないかもしれない。小松先生の、あの天才的な能力があれば、なんとかなる！

「課長・・・・・・お忙しいとこスミマセン」
「お？　どうしたの、泉田さん」
「雑誌の巻頭特集のアイデアなんですけど」
「なんか、いいの思いついた？」
そうだった、１０月号の女性ランドの巻頭特集すっかり忘れてた。

「結婚しない独身３０代の女子力っていうのは、どうでしょう？」
おお！
いいねえ。
ちょっとタイトル長めだけど、それがまたウケるかもしれない。
「よし、やってみよう。・・・・・・で、コンセプトは？」
「それは、適任者がいます。・・・・・・橋本さんです。彼女ならきっとこの企画を成功させると思うんです」

橋本さんね。
なるほど、たしかに結婚しない独身３０代の女子力だな。
うん。
時間もないし、それで行こう！

「ありがとう、泉田さん。君の企画でやってみるよ」
「課長、私のアイデアだって、橋本さんには言わないでくださいね」
「女同士の事情ってやつだな。わかったわかった」

さて、印刷所に電話だ。
「・・・・・・あ、秋冬出版の竹之内ですが。・・・・・・ええ、小松先生の原稿の件で・・・・・・はい。今日中にはデータを送信できるかと。・・・・・・今日中です。よろしくお願いしま〜す」

ふう、これでなんとか待ってもらえそうだ。

「竹之内課長、ちょっと話しがあるんだけど、いい？」
社長・・・・・・なんだろう？
返品庫から手招きするなんて、よほどのことだぞこりゃ。

「なんですか？」
「じ、実はね。今月の給料なんだが・・・・・・すまん！　少し待ってもらえんか？」
「頭上げてくださいよ、社長。オレたち、こんな困難、いくらでも乗り越えてきたじゃないですか！」
「ありがとう・・・・・・。そう言ってもらえると助かるよ」

「ウチには、小松先生がいます。彼女ならこの会社を立て直す原動力になると思うんです」
「課長、小松先生はたしかに人気漫画家だが、デキにムラがありすぎる。そこが少し不安なんだ」

さすが社長。
こんな時でもサイコーの読み物を提供しようとする力は健在だ。
これなら、大丈夫だ。

「じゃあ、オレ、さっそく小松先生の原稿をもらいに行ってきますんで、待ってて下さい」
「頼んだよ、課長」

よし、小松先生の原稿、必ず今日中にもらってやる！
・・・・・・だけど、またアレやらさせられたりしないだとうなあ。
小松先生、悪趣味なんだよなあ。。。
アレだけは、やりたくない。


【夕】


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