【朝】

【昼】


８月７日は、花の日だ。
毎年恒例の花の日キャンペーンをやらなきゃな。
あと２０日くらいあるから、どんなキャンペーンにするか、じっくり考えよう。

それにしても、展望台の花壇を荒らしたのは、誰なんだ？
こんなに可憐な花を傷つけるなんて、オレには信じられねえ。
今日こそ、とっ捕まえてやるぜ！

「こんにちは」
「お、菅井さん、いらっしゃい」
お得意さんが来てくれた。
孫の有香ちゃんを引き取ってから、菅井さん元気いいなあ。
うれしいんだろうな。
孫といつも一緒にいられるんだからよ。

「どんなお花があるかしら？」
「今日は、いいバラが入ってるッスよ。シーフォームっつって、ほら、白くて小さくて可愛いっしょ？」

「本当ね。まるで有香みたいだわね」
「言われてみればそうッスね」
「おじいさんがね、今、有香の絵を描いてるのよ。前はよくバラなんかを描いてたけれど・・・・・・でも、今日は、生花用の花を買いに来たんですよ」

生花ね。
じゃあ、あんまし派手でもうまくねえな。
「朝顔なんてどうッスか？」
「・・・・・・そうね、実は、最近ね、孫の有香がちょっとふさぎ込みがちなのよ。そりゃ、私たちの前じゃ、あの子気丈に振舞ってはいますけど、一人でいる時、泣いてるのよ。パパ、ママってね。それがわかるもんだから、かわいそうでかわいそうで・・・・・・」

有香ちゃんは、なんて優しい子なんだろうな、オイ。
グスン。
「うんうん。菅井さんの気持ち、わかるッス。有香ちゃん、ご両親をいっぺんに亡くされたんスから、無理ねえッス」

「だからね、有香に、元気になってもらえるような、生花をやろうかと思って」
「よし、そんならひまわりッス！　ひまわりしかねえッス」

「そうね、なんだか元気をもらえそうだわね」
「きっと喜ぶッスよ、菅井さん」
「じゃあ、コレちょうだい」

有香ちゃんも、今は悲しいかもしれねえけど、こんなにステキなおばあちゃんにこれから育てられるんだから、いつかは悲しみを乗り越えられるゼ。

「菅井さんには、コレもオマケしとくッス」
「いいんですか？　コレ、さっきのバラね？」
「いいッスよ。オレから有香ちゃんへプレゼントッス」

「ありがとう」
「それじゃあ、またご贔屓に！」

がんばれ、有香ちゃん！
オレも陰ながら応援してっからよ。

それにしても、こんなにいいヤツらが、いるってのに、展望台じゃあ、誰かが花壇を荒してるんだよな。
ちっくしょう。
夕方は、展望台で張り込みだ。

見つけたら、ただじゃおかねえゼ！


【夕】


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