【朝】

マリーゴールド。
メランポディウム。
サザンクロス。
ガザニア。
そして、コスモス。

みんな、おはよう！
さあ、たっぷりと朝の水を飲むんだ。

ヘクソカズラは、ネーミングこそ醜いが、この繊細な花弁、すばらしいじゃないか。
アパート暮らしじゃなかったら、こんな畳の上に新聞紙を敷いたような環境で、お前たちを育てたりはしないのに・・・・・・。

さあ、飲め！
うんと飲んで、美しい花を咲かせておくれ。

｢・・・・・・おはよう、早いのね・・・・・・ふわぁぁ～｣
｢おはよう、静香。どうした、目が腫れぼったいぞ｣
｢ええ、昨日、・・・・・・寝るのが、遅かっ・・・・・・Zzz・・・Zzz｣
え？
なんだ、こいつ、立ったまま居眠りしてやがる。

｢・・・・・・ああ、ごめんなさい。で、なんでしたっけ？｣
｢いいんだよ、別にたいしたこっちゃねえから｣

そうか、仕事に家事。
そして、子育て。
静香も大変だな。

オレは幸せだ。
良妻賢母と結婚できて。

｢とうさん、おはよう｣
｢おはよう。丈、お前もゲームばかりやってないで、自然を愛する気持ちを養わないとな｣

｢えー、だってさ、かあさんがゲーム・・・・・・｣
ん？
｢丈！　余計なおしゃべりはいいから、早くご飯食べなさい｣
｢はい、かあさん｣

｢どうした？　言いかけてやめるなよ｣
丈のやつ、なんでかあさんには、あんなに従順なんだ？

｢なんでもないのよ。まったく、この子ったら、ゲームのやりすぎで、仮想現実の世界からなかなか抜け出せてないのね｣

丈のやつ、どうしようもねえな。
明日、土曜日だから、この島の自然を教えてやるぞ。
｢丈、明日、とうさんと出かけるぞ！｣

｢・・・・・・ところで、あなた、展望台の花壇荒しの犯人って、見つかったの？｣
むむむ～。

｢まだ、見つからねえんだ。今日こそ下手人の尻尾を捕まえて、とっちめてやる！　花を愛さないヤツは、オレが許さねえぞ。あの花壇には、ひまわりやクレマチス、マリーゴールドなんかが咲いていてな、その他にも・・・・・・おい、静香？　おい｣
｢・・・・・・Zzz・・・Zzz｣

・・・・・・また、居眠りか。
しかし、よく眠る女だな。
それだけ、疲れてるってこったな。

さて、そろそろフラワーショップの仕事へ出かけるとすっか。


【昼】


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