魔法使い(『おせっかいな神々』より)2010-10-31


14歳になると、魔女の血を受け継ぐ者は、その母親に連れられて、サバト(サタンが主催する集会)へ始めて参加することができた。

14歳になったマリアも、母に連れられて、サバトにやって来た。
サバトは普段は誰も訪れないような、町はずれにある洞窟で行われていた。

暗い洞窟内に、大きなテーブルがあり、その上の燭台に火が灯され、室内をユラユラと不気味に照らしていた。

黒いフードを被った魔女たちがテーブルを囲み、一番奥に牡山羊のマスクを被ったサタンがいた。

「さあ、マリア、練習したとおりにサタンの前に行くのよ」
「はい。ママ」
マリアは、テーブルの上に立つと、そのまままっすぐサタンの前に歩み寄った。

「よく来てくれたね、マリア。怖くないかい?」
サタンは、優しくマリアの体を撫でながら言った。
「はい」

すると、周りにいた魔女たちが、マリアのそばにやって来て、香を焚いたり、汚れた水をかけたりした。
「それではマリアよ。お前に魔女の証しとして、この指輪を与えよう」

マリアは、左手をサタンの前に出した。
サタンは、マリアの指に指輪をはめてやった。
「マリアよ。この指輪は、世界の始まりと終わりを司る指輪だ。次にこの指輪をはめる時は、世界を終わらせ、アーリマンが復活する時なのだよ」
サタンは、マリアの頭を撫でながら言った。

「世界を終わらせる?」
「そう、指輪をはめ、ある秘密の呪文を唱えると、世界はバラバラに崩壊するのだよ。だが、その呪文は『イアラ・キマイラ』。その時がきたら、唱えるのだよ」

マリアは、魔法陣の中央でサタンへの帰依を誓い、正式な魔女になることができた。
「さあ、今宵は新たな魔女誕生のめでたい日だ。飲んで食べて大いに盛り上がろうではないか!」

「よかったね、マリア。これであなたも立派な魔女よ! ママ、うれしいわ!」
母親が、涙ながらにマリアを抱きしめた。
「ありがとうママ。私、これからもっともっと魔法の勉強するわ!」

テーブルの上には、いつの間にか御馳走が沢山のっていて、他の魔女たちはもう着席し、乾杯の準備ができていた。
マリアと母親も席に着いた。

「あら、マリア。ダメじゃないの。もう指輪は外しなさい。さっきサタンに言われたでしょ。次はめる時は、世界の終りの時だって。ほら、ママみたいに、こうしてネックレスにして、首にかけておくのよ」
母親が、マリアのネックレスを首から出して、ここに付けておくように言った。
「わかったわ、ママ」

でもマリアは、魔女になれたことがうれしくて、指輪をはめていたかった。
だから、食事の間だけでも、内緒ではめていようと思った。

「うわあ! 見たこともないような、すごいお料理だわ!」
マリアはゴクリと喉を鳴らした。
儀式の前は食事をしてはならなかったから、腹ペコだったのだ。

乾杯が終わり、やっと食事となった。
「いただきまーっす!」
マリアは大喜びで、豚の丸焼きへナイフを伸ばした。

その時、夜空に暗雲が立ち込めて、洞窟がガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
洞窟だけではない。
町が、いや、世界が轟音とともにあっという間に崩れ去った。

暗雲の中央が割れ、そこからアーリマンが顔を覗かせ、サタンに言った。
「どこにおる! わしを召喚する呪文を唱えた者は!」

サタンは、やっとの思いで立ち上がりアーリマンに言った。
「だ、誰もあなた様を召喚したものはおりません! 誰一人、指輪をして呪文を唱えたものはおりません!」

「いや、たった今、呪文は唱えられた。マリアという魔女が、『イアラ・キマイラ』と唱えた」
瓦礫の下から、辛うじて助かったマリアが出てきて、アーリマンに言った。

「たしかに、私は指輪を外さなかったわ! でも、『イアラ・キマイラ』なんて呪文は唱えてません! ただ、『いただきます』って言っただけです!」

「えー!? 『イアラ・キマイラ』じゃなくて、『イタダ・キマス』? あらら、聞きまつがえちゃったのネ。ってことは? お呼びでない? お呼びでない・・・・・・これまった失礼いたしました!(笑)」
アーリマンは、照れ笑いを浮かべて、お茶目な表情をして雲の間に消えて行った。

「・・・・・・ダ、ダメだこりゃ」
・・・・・・ばたり。


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コメント

_ 矢菱虎犇 ― 2010-10-31 09時30分45秒

サタンの儀式を受ける女の子がマリアてっいう名前なのもいいですねぇ
そして言いまつがいオチ。
さらに長介さんのキメ!
カメラを揺れ揺れグダグダにしてほしい場面です。
ドリフやクレージーキャッツのお約束ギャグの王道の楽しさを文章でやっちゃうなんて~

_ 矢菱さんへ ― 2010-10-31 09時36分58秒

は、早い!
バリカタのとんこつラーメンを注文した時よりも早いコメント!
ありがとうございます!

>ドリフやクレージーキャッツ
あ、そうだ。
クレージーキャッツ!
植木等ギャグも入れなきゃ!

_ tatsu ― 2010-10-31 09時57分39秒

がちょ〜ん!

_ tatsuさんへ ― 2010-10-31 10時09分34秒

はらほろひれはれはらほろひれはれ

_ もぐら ― 2010-10-31 11時29分49秒

わぁ~昭和や、昭和。

_ 星鉄 ― 2010-10-31 12時48分40秒

緊張感を一気に覆しましたね、まさに昭和のコントそのままじゃないですか(笑)

しかしながら、連日でのブログ更新はまさに圧巻です(凄)
ワタシなんか、ネタ考えるだけでもヒーヒー言ってますよ(悲)

_ ふたたびもぐらさんへ ― 2010-10-31 14時53分43秒

オチが弱いボクとしては
苦肉の策って感じで照れくさいです(笑)
今日はハロウィンってことで
このタイトルをチョイスしました。

_ 星鉄さんへ ― 2010-10-31 14時56分45秒

最初にアップした時と、違ったオチに書きなおしたんです。
最初は昭和チックなオチじゃなかったんですよ~(笑)

>連日でのブログ更新
タイトルが、すでに決まってるので
その分、更新が多いのかもしれません。
タイトルに合わせて連想ゲームみたいに書いてく感じです。
案外、いつもはタイトルを考えるだけで疲れちゃうんですよね。

_ tatsu ― 2010-10-31 18時26分10秒

星 新一さんは地元の星だった!
星さんの父は星薬科大学の創立者で星製薬の創業者・星一(ほしはじめ)。
森鴎外は大伯父にあたる、そうです。
星製薬は地元の品川区に有った(現在五反田TOCが有る場所)そうですが
会社は父の急逝を受けて新一が社長を引き継いだが経営が悪化しており、
経営は破綻し会社を他人に譲るまでその処理に追われたそうです。

_ tatsuさんへ ― 2010-10-31 23時30分16秒

星新一は実業家だったんですねえ。
しかもtatsuさんの地元!
スターですよ。
その地元のスターを冒涜するようなブログですけど
よろしくおねがいします(笑)

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