第5話:闇の眼(『ボッコちゃん』より) ― 2010-12-14
メリー・クリスマス!クリスマス競作やりましょう!《第4話:『ある占い』へ》
私が、パーティ会場へと続く階段を上がろうとした時、Kが降りてきた。
「K!」
私は、Kの名を呼んだ。
Kと私は、高校からの親友だった。
大学は違ったが、私たちはしょっちゅうお互いの家を行き来した。
奥手だったKに、結婚相手を紹介したのも私だ。
だけど、それは失敗だったかもしれない。
Kの奥さんが、浮気しているという噂を耳にしたからだ。
Kは、そのことで悩んでいるようだったが、私と会う時は、できるだけその話を避けるようにしていた。
今日は、たまたま私とKの共通の友人が主催するクリスマス・パーティに呼ばれていたのだ。
Kは階段の途中で立ち止まり、私を見てひどく驚いたような顔をした。
実際、Kの額は汗ばんでいた。
「クリスマス・パーティがはじまるってのに、どこへ行くんだい?」
私がそう訊ねると、Kはやっと私に気付いたような、拍子抜けした顔になり、気まずそうにほほ笑んだ。
「いや、急に用事ができたんだ。だから俺は、行かなくちゃならない」
「だけど、はじめの乾杯くらい大丈夫だろう?」
私が言うと、Kは腕時計を見て、溜息をついた。
「・・・・・・ああ、乾杯くらいなら・・・・・・。でも、すぐに帰るよ。すまないけど」
Kは、降りてきた階段を私と一緒にあがった。
そして、クリスマス・パーティは、時間どおりにはじまった。
乾杯の前に、長たらしい挨拶があった。
私は、Kとその時、ちょっとだけ話をした。
「K、とても急いでたみたいだったけど、どこへ行くつもりなんだい?」
「・・・・・・目だよ」
Kは、そう言うとうつむいた。
「目? 目ってなんの?」
「昴だよ」
Kは、わけのわからないことを言った。
「すばる?」
「ああ、プレアデス星団のことだ」
Kは、私に話しかけているというより、その向こうの何かに口述筆記を依頼してでもいるような話し方だった。
「プレアデス・・・なんだって?」
「昴、プレアデス、なんでもいい! とにかく、全てなんだ。俺は、目に呼ばれている。だから行かなくちゃならないんだ!」
「だけど、昴ってのは・・・・・・」
「これは、秘密事項なんだが、君になら教えよう。・・・・・・俺は、スバルビルへ行くんだ。俺は、目に呼ばれてるんだ。そこに行けば、暗闇から解放される」
「スバルビル? 新宿のかい?」
「ああ、だから時間がないんだ」
そこまで言った時、挨拶が終わり、乾杯がはじまった。
Kは、シャンパンを一気に飲み干すと、私の肩を叩いた。
「すまん、本当に。・・・・・・本当に行かなくちゃならないんだ」
ぼそりと言って、会場を出て行った。
昴。
プレアデス星団。
目。
暗闇からの解放。
いったいKは何を言っているんだろう?
その時の私には、Kの言った言葉の意味について、まったく理解できなかった。
だけどそれが、私が最後に見た、Kの元気な姿だった。
≪つづく≫
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コメント
_ 矢菱虎犇 ― 2010-12-14 20時34分13秒
_ 矢菱さんへ ― 2010-12-14 20時41分03秒
謎ですねえ。
新宿にスバルビルっていうビルディングがありまして、そこの1階にこの動画にあるように
巨大な目のオブジェがあるんですよ。
いつか、なんかで使ってやろうと思ってたんですけど、今回ついに使ってしまいました。
新宿の目
っていうんです。
なんだか恐ろしいですよね。
あ、この連作のオチや方向性は特に考えてないんです。
自分でもビックリするようなラストになればいいんですけど(笑)
新宿にスバルビルっていうビルディングがありまして、そこの1階にこの動画にあるように
巨大な目のオブジェがあるんですよ。
いつか、なんかで使ってやろうと思ってたんですけど、今回ついに使ってしまいました。
新宿の目
っていうんです。
なんだか恐ろしいですよね。
あ、この連作のオチや方向性は特に考えてないんです。
自分でもビックリするようなラストになればいいんですけど(笑)
_ haru ― 2010-12-14 21時01分04秒
新宿にこんな目があるんですね。
私が東京にいたのは学生の時だけ、もう随分昔になるので、
東京も変わったんでしょうね。
だいいち、こんな目なんかなかった。
どんなメー!って感じかなぁ。。。
どき、どき、どき・・・なにが起こっているのか民間人には
わかりません。とほうもない闇の世界???
私が東京にいたのは学生の時だけ、もう随分昔になるので、
東京も変わったんでしょうね。
だいいち、こんな目なんかなかった。
どんなメー!って感じかなぁ。。。
どき、どき、どき・・・なにが起こっているのか民間人には
わかりません。とほうもない闇の世界???
_ Madam Garden ― 2010-12-14 21時22分28秒
スバルビルって夏休みになると、朝早くにキャンプに行く子どもがいっぱい集合してる、あのスバルビですよね。
なんか、身近な場所がミステリアスな話に出てくると、よりミステリアス度が深まる気がするのは私だけでしょうか?
なんか、身近な場所がミステリアスな話に出てくると、よりミステリアス度が深まる気がするのは私だけでしょうか?
_ haruさんへ ― 2010-12-14 21時57分11秒
新宿の目っていうんですね。
ウニョウニョ動いてるんです。
で、巨大。
なんだか不思議なオブジェですよ、コレ。
クリスマスと何の関係があるかはわかりませんが、
そういうのも書いてみました。
ウニョウニョ動いてるんです。
で、巨大。
なんだか不思議なオブジェですよ、コレ。
クリスマスと何の関係があるかはわかりませんが、
そういうのも書いてみました。
_ Madam Gardenさんへ ― 2010-12-14 22時00分32秒
そうそう、そのスバルビルです。
第1話、第2話の「僕」は、具体的な説明がないんですけど
第4話、第5話の「私」は、場所が具体的になってるんです。
で、その間を取り持ってるのが、「K」なんですけど、
>身近な場所がミステリアスな話に出てくると、よりミステリアス度が深まる
まさに!
そうですねえ!(発見!)
第1話、第2話の「僕」は、具体的な説明がないんですけど
第4話、第5話の「私」は、場所が具体的になってるんです。
で、その間を取り持ってるのが、「K」なんですけど、
>身近な場所がミステリアスな話に出てくると、よりミステリアス度が深まる
まさに!
そうですねえ!(発見!)
_ もぐら ― 2010-12-14 23時40分47秒
なんだか すっごいわくわくしてるんですけど。
このあとどうなるんでしょうか?
わくわく どきどきーーー!
このあとどうなるんでしょうか?
わくわく どきどきーーー!
_ tatsu ― 2010-12-15 00時28分25秒
最後はヤマト発進!でしょうか。
_ もぐらさんへ ― 2010-12-15 12時20分39秒
ボクもいろんなモノを散らかしちゃったので
どうやってエンディングを迎えたらいいのか
どきどきハラハラっす!(笑)
どうやってエンディングを迎えたらいいのか
どきどきハラハラっす!(笑)
_ tatsuさんへ ― 2010-12-15 12時22分15秒
ヤマト沈没!
って終わりはダメっすよね。。。
って終わりはダメっすよね。。。
_ りんさん ― 2010-12-15 14時56分06秒
またまた謎のキーワードが出てきましたね。
新宿にこんな大きな目があるんですね。
続きが気になります。
ところで、Kの奥さんは、第1話で浮気していた人?
そういう風に、いろいろ繋がっていくのかと思うとわくわくしますね。
新宿にこんな大きな目があるんですね。
続きが気になります。
ところで、Kの奥さんは、第1話で浮気していた人?
そういう風に、いろいろ繋がっていくのかと思うとわくわくしますね。
_ おりんさんへ ― 2010-12-15 19時37分46秒
あるんですよね、新宿西口のスバルビルに。
まさに目ですよ。
でも、ずっとそこにあるから、慣れちゃって見向きもあれてないんです。
ボクなんて、圧倒されちゃってますけどねえ。
>Kの奥さんは、第1話で浮気していた人?
そうですそうです。
自分自身でリンクしているという新しいパターンです(笑)
まさに目ですよ。
でも、ずっとそこにあるから、慣れちゃって見向きもあれてないんです。
ボクなんて、圧倒されちゃってますけどねえ。
>Kの奥さんは、第1話で浮気していた人?
そうですそうです。
自分自身でリンクしているという新しいパターンです(笑)
_ Madam Garden ― 2010-12-16 00時34分22秒
うーん、具体的なこととそうじゃないことのが、非日常的な状況に浮かんでる、そのMIX感が良いですね。
自分では不思議な話ってかけないので、あこがれます。
続きがますます気になるので、よろしく。
自分では不思議な話ってかけないので、あこがれます。
続きがますます気になるので、よろしく。
_ Madam Gardenさんへ ― 2010-12-16 06時10分18秒
頭ん中では、まともな筋を考えてるんですけど、書いてるうちにヘンテコになっていくんですよ。
Madam Gardenさんのようなスタイルで書いた方がリアルで、読みごたえがあるし説得力があるから、ボクは見習いたいくらいなんです。
でも、なかなか難しいッス!
続き、今夜書きま~す。
Madam Gardenさんのようなスタイルで書いた方がリアルで、読みごたえがあるし説得力があるから、ボクは見習いたいくらいなんです。
でも、なかなか難しいッス!
続き、今夜書きま~す。








こんだけいろんな謎を提示したからには、ヴァッキーナさん、お話の方針を固めたにちがいない!
と勝手に思いつつも、期待が膨らんでブルンブルンしています。
あ、僕はついのべをついに始めましたよ!