≪おはよう、高橋研究員。

ＶＴＲ再生早々、こんな恰好でスマン。 ふんどし一丁の方が、私の肉体の変化をつぶさに観察できると思ってな。

さっそく本題に入るが、君も承知のとおり、私は、アンチエージングの究極の形を日夜研究していたわけだが、ついにその研究の成果が出た。

その新薬研究の最終段階として、先ほど私は、自分自身の体へ薬剤を投与してみた。
するとすぐにその効果が出はじめた。

・・・・・・見たまえ！
体のたるんだ筋肉に張りが出てきて、顔中の皺が消えはじめた。

出っ張った腹も、このとおり、君が今見ているとおり、まるで風船がしぼむようになくなっていくじゃろ？

ああ、頭脳の働きがとてもハッキリとしてきた。
喜べ、高橋研究員！
つまり、私の作った新薬が、肉体の完全なる若返りに成功したのだよ！

君が、今の私を見たら、きっと、新しく入った後輩の研究員だと思うに違いない。
だが、こうして若返りの過程を見ているのだから、そのすばらしさに驚愕しているだろう。

この新薬のすばらしいところは、いくら肉体が若返っても、脳の機能はある一定の段階まで若返ると、そのまま維持されるということだ。

つまり、私は肉体が若返ったその分だけ、まだやり残している研究が続けられるわけなのだ。

しかし、この新薬を私自身に投与して、ある欠点に気づいた。

・・・・・・若返りが、止まらないのだ。

このまま、肉体の若返りが進行すれば、私は確実に幼児にまで戻ってしまうだろう。

このことについては、以前君にもその可能性について話していたし、君が今見ているこのＶＴＲからも、理解はしてもらえると思う。

高橋研究員、これは、人類が求め続けていた永遠の命を得ることができる世紀の大発明なのじゃよ！

ああ、私の肉体は、いったいどこまで若返るんじゃろう・・・・・・≫

｢博士、おはようございます！　・・・・・・あれ？｣
高橋研究員が、朝、研究室へやってきた時、博士の姿はどこにもなかった。

怪訝に思った高橋研究員は、しばらく研究所の中を探しまわり、ソファの上に不自然に置かれた赤い布を見つけた。
そして、それを拾い上げると、全てを理解して叫んだ。

｢あ～！　これ、博士のふんどしじゃねえか！　しかも、前がガッビガビ～！　ん？　ビデオカメラが回りっぱなしだぞ。・・・・・・夜中に独りでナニやってんだ？」　

高橋研究員は、顔をしかめながら、前がガッビガビ～の真っ赤なふんどしを洗濯機へブチ込んだ。

「・・・・・ったく、あの変態ジジイめ、どこに隠れてんだ！｣


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