第8話:少年と両親(『未来いそっぷ』より)2010-12-19

メリー・クリスマス!クリスマス競作やりましょう!


《第7話:『秘密結社』へ》


「おじいちゃん、パパとママ、今日も遅いの?」
孫が、テーブルの上に置いてあるチョコレートケーキをまじまじと見つめながら言った。

「うーん、どうかのう・・・・・・。パパは、お仕事が終わって、それからクリスマス・パーティへ行くと言っておったからなあ。・・・・・・ママは、午前中には旅行会から帰って来とるはずなんだが、何をしておるやら・・・・・・」 老人が、でっぷりとした下腹をポンと叩いた。
気まずくなるとよくやる癖だ。
孫が、老人のそのしぐさを見て、今年もパパとママのいないクリスマスだということを悟った。

「すまないなあ。お前にばかり寂しい想いをさせちまって」
老人が孫の頭を撫でた。

「いいんだよ、おじいちゃん。ぼくは、ちっとも寂しくなんかないんだ。サンタさんだって、来なくたって、ぼく平気だもの」
孫が、無理をしてそんな強がりを言っているということは、老人には痛いほどよくわかった。

「・・・・・・さて、ケーキを食おう! おじいちゃんが切ってあげるぞ~。・・・・・・ほれ! お前には、一番大きなヤツと、それからチョコのプレート、あとは、イチゴじゃ」
「やったあ!」

老人と孫は、おいしそうにケーキを食べた。
老人は、ワインを飲み、孫はサイダーを飲んだ。
そして、肉を食べ、サラダを食べた。
歌を唄い、少しだけ踊った。

そして、もう眠る時間になった。
ふたりは、ほぼ同時にあくびをした。
「さて、サンタさんが来るように、そろそろ眠るとしようか」
「・・・・・・パパとママ、帰ってこなかったね」
「ふたりとも忙しいんじゃよ」
「そっか。お休み、おじいちゃん!」

孫の笑顔を見て、老人は、ある決意をした。
こんなに悲しい想いをさせておくわけにはいかない。
老人は、今まで誰にも秘密にしていたことを、孫に打ち明けることにした。

「なあ、ちょっとこっちへ来ておくれ」
老人は、孫を膝の上に座らせた。
「これ、なんだかわかるかい?」
「なあに? この棒」
「これは、魔法の棒なんじゃよ」

「魔法の棒?」
「そう、おじいちゃんは、ずっと昔に神様と契約をして、これをもらったんだ」
「神様から?」
「そうじゃ。この棒はな、年に一度だけ使うことが許されておるンじゃ。・・・・・・クリスマス・イヴの夜、子供たちが寝静まった時にな」
老人は、そう言うと、孫を膝から下ろし、立ち上がった。

そして、魔法の棒を自分の体にまんべんなく振った。
すると、老人の体はみるみる光り輝いて、ひとまわり大きくなって、ついには、本物のサンタクロースになった。
「ホッホッホー! どうじゃ、おじいちゃんはサンタさんだったんじゃよ!」
あまりにも突然のことで、孫はその場にしゃがみ込んでしまった。
「おじいちゃんが、サンタさん?!」
「そうじゃ、今までずっと秘密にしていて、すまなかったの」
サンタクロースは、威厳に満ち溢れた態度で、少年に微笑んだ。

真っ白い髭がにんまりと動いて、世界で一番優しい笑顔になった。
「やったあ! おじいちゃんは、本物のサンタさんだあ! 本物のサンタさんだあ!」

サンタクロースは、大きな白い袋を少年の前に置いて、ゴホン! と、咳払いをひとつして、おどけてみせた。
「さあて、プラネタリウムで、お前が願ったプレゼントをあげるぞお!」

プレアデス星団に、小さな星がひとつ輝いた。


≪つづく≫

『はじまり』は、こちらをクリック


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コメント

_ 矢菱虎犇 ― 2010-12-19 14時16分41秒

地球防衛軍のラストで巨大なバクが地球を飴玉のチャオにして飲み込んじゃったじゃないですか(だったっけ?)
それからしっぽの話も。
ヴァッキーノさんって途方もなくスケールのデカイ話を考えちゃいますよねぇ。
今回のお話もデカイ、デカイ!!
スケールのでっかいクリスマスを楽しみにしています。

_ tatsu ― 2010-12-19 14時59分04秒

また新たなストーリー展開ですね。

お爺ちゃん、真っ白な髭をとると
ステージに立って一曲

サラバ~スバルヨ~♪
アレ、谷村さんじゃないですよね。

_ りんさん ― 2010-12-19 16時40分29秒

なになに?プラネタリウムって本当の宇宙だったりして。
新しい展開に、また謎が増えましたね。
あと2回ですか?
最終回前に、全部読み返しておさらいしておこう。
(ハリーポッターみたいだな)

_ 矢菱さんへ ― 2010-12-19 20時25分48秒

テーマがいつも一緒ってのが、目標なんです。
何を読んでもいつも同じじゃねえか!みたいなの。
ボクが、尊敬するキューブリックは、映画のテーマが一貫してたと思うんです。キューブリックのテーマは『コミュニケーションの欠落』
キェシロフスキ監督は、『偶然と運命』。
そういう感じです。

>途方もなくスケールのデカイ話
こういうスケール感だけで、誤魔化そうというのが、バレちゃいましたあ?(笑)
あと2話!
逆に縮小したら、すみません。。。

_ tatsuさんへ ― 2010-12-19 20時28分25秒

昴をカラオケで歌うと、ひんしゅくだって聞いたことがあって、
何がひんしゅくなんだろうと思ってたんですけど、この前唄ってた人がいたんです。
しかも、マイウエイも!
長いんですよ。
1曲が長い!

_ おりんさんへ ― 2010-12-19 20時36分50秒

もう、どうにでもなれ!って感じで~す(笑)
どうしていいか、わかんなくなってきましたゼ。
あと2話でしょ?
強引グ~ マイウエイでいきます!
どうすっかなあ。。。

_ haru ― 2010-12-19 21時20分13秒

ヴァッキーノさんのお話は、まるで宝石箱のようですね。
キラキラ輝く星がちりばめられ、そのひとつ一つに物語がある。
どれか一つでもいいから盗もうと思うのですが、かなり難しい。
でも、いつか……。
          回答じゃなかった怪盗Xよりの脅迫状で~す。

_ haruさんへ ― 2010-12-20 07時39分41秒

ボクはいつも一貫性のあるもの、例えば三菱鉛筆みたいにかくばってて、純粋にまっすぐなモノが書けたらいいのになあと、思っているんですけど、
無理なんです。
お話しの先を考えることができないので、
8話ともなるとこんな無茶苦茶な展開に落としどころを見つけたりしてしまうんです(笑)
あと2話。
メリークリスマスです。

_ Madam Garden ― 2010-12-20 20時32分47秒

サンタが出てきた!
ほんとスケールがでっかい。星団だもんね。団地の中の話かいてるおばちゃんとは違うわね~。
あと、2話なんですね。楽しみにしてます!

_ Madam Gardenさんへ ― 2010-12-20 21時26分35秒

>サンタが出てきた!
でっかくなっちゃった!
ってなわけで、なんだかこんな強引な感じになってしまいました。
思いつきで書いていると、こうなっちゃうんですね(笑)
あと2話。
第9話、こんやアップしちゃいますってば。

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