【朝】

お花畑のお花って、なんだと思う？
うふふ。
あのお花の名前はね、ヘブンズ・フラワーっていうのよ。
エミリが名付け親。

ああ、いい夢だったわあ。
夏生さんと、くまのマークと一緒に、お花畑で摘んだ草で、ワラジを編むの。
ステキだったなあ。
足の指で、よった草を挟んで、くるくるくるくるワラジを編むの。

おはよう！
マーク。

「エミリ、また寝ぼけてるのか？　オレはマークじゃなくて、お前のお父さんだよ」
「あ、パパ、おはよう！」

あれ？　ママがまた怒ってる。
今朝は、どうしたんだろう？

「あなた、どうして昨日、帰るコールしてくれなかったのよ。もし、ワタシが死んでしまってたら、どうするの？　ひどいわ」

カエルコール？
カエルさんの合唱団かしら？
「ママ、カエルさんたちがみんなで歌うの？」

「え？　なに言ってるの？　お父さんがね、昨日・・・・・・」
「何度も何度も、しつこいんだよ」
またケンカ？

あ、パパの作ったモーニング・セットだあ！
うれしいなあ！
「いただきまーす」

「ほら、お前も落ち着いて、オレが作った飯を食え」
「ふん！　わかったわよ」

「エミリ、お父さんの料理はどうだ？」
「うん、おいしい！　まるで、コックさんみたーい」
「あ、ありがとう。ところで、エミリ、お前、ボーイフレンドはいるのか？」

ボーイフレンド？
なに？
「ちょうちょのこと？」
「ちょうちょ？　なに言ってるんだ」

「夏生くんでしょ？　エミリの彼氏は」
ママ、夏生くんのこと、知ってるんだあ。
すごーい。
「ママって、エスパーだね！」

「エミリ、あなた、もう１７歳なんだから、そろそろママ、パパじゃなくてお父さんお母さんって言いなよ。それから、ご飯を食べてる時は、ぬいぐるみを離しなさい」

ぬいぐるみじゃないよ。
くまのマークだよ。
「ね、マーク」
「なに？　お父さんは、マークじゃないって言ってるだろ。・・・・・・まったくおかしなことを言う子だ、エミリは」

「今日は、バイトあるのよね」
「うん、エミリちゃんはアルバイトだよ」

「その、バイトを辞めて、お父さんの仕事場で働かないか？」
「エミリちゃんはね、イヤだってさ」

「ぬいぐるみを媒介して会話するんじゃないよ、エミリ」
パパ、これはね、マークが話してるんだよ。

「ね、マーク」
「だから、お父さんは・・・・・・」


【昼】


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