諸星 俊彦(45歳)2011-03-27


【朝】

大家族ってのは、ダイナミックでいいな。

ガン! ガン! ガン! ガン!
「それ! みんな起きなあ!」

おお、肝っ玉かあさんの温子がフライパンの底で告げる朝の音。
力づくの厳しいい母ちゃん、そして、心優しい私。
こういう関係が、仲の良い大家族を作りあげるんだ。

私は、こうして居間でどっしりと座っていればいいんだ。
「桃子、その辞典には、なにか面白いことが載っているのか?」
「うん。【家庭】」
「家庭? なるほど。いいじゃないか、どんな意味なんだい?」
あはは、子供ってのは無邪気だな。

「【家庭】内村鑑三『所感十年』より・・・・・・家庭は日本人最大多数に取りては幸福なる処ではなくして忍耐の所である。だって」

「桃子、それは間違ってるよ!」
まったく、なんて辞典だ。
「おはよう、父ちゃん」
なんだ? 達也、なんだかしょぼくれてるな。
「お早う。・・・・・・どうした、なよなよして」

「・・・・・・父ちゃん、俺・・・・・・ううん、なんでもない」
なんなんだ?
家族ってのは、コミュニケーションの土台だぞ。
なんでも言い合えるのが、家族じゃないか!
「いいんだよ、達也。話したくなったら、いつでも父ちゃんに言いなさい。私はいつでも達也の味方なんだから」

「俊介、そろそろ床屋に行ったらどうだ? どうもお前は不潔だぞ」
「ああ、そりゃそうと、父ちゃんは、母ちゃんのどこが好きなんだよ」
母ちゃんのどこって?
なにを急に。

「正直者で、頑張り屋さんなところだ」
「へえー。本当は、母ちゃんが巨乳だからじゃないの?」
「朝から、なにバカなこと言ってんだ!」
まったく、俊介は自分の母親をどんな目で見てるんだ。

「ほら! 邦子! いつまで寝てんの! 早く起きないと、洗濯しちゃうわよ!」
「わかったわかった。今起きるから」

まったく、邦子には困ったもんだよ。
反抗期なんだろうけど、家族団欒の時間だけは、素直でいい子な邦子でいてほしいな。

「邦子もやっと起きてきたことだし、さあ! 今日もみんなでラジオ体操するぞ!」
「オー!」
家族みんなで、ラジオ体操の日課。

「♪あーたーらしい朝が来た。希望の朝だ!」
「♪よろこーびに胸をひーろげ」
「♪大空あおげ~」

いっちにぃ!
いっちにぃ!

「邦子、最近お前、晩御飯一緒に食べてないな」
いくら反抗期だからって、晩御飯くらいは一緒に食べたいもんだ。

「だからなに? 今夜もワタシ、バイトのみんなと食べてから帰るし」
バイトと家族、どっちが大事なんだ?
バイトの仲間って言ったって、血のつながりはないじゃないか!
あの、かわいかった頃の邦子よ、カムバーック!

「あんた! さっさと朝ごはん食べてちょうだい! 洗濯もしなきゃいけないし、早く早く!」
おっと、そうだった。

そろそろ、仕事に行くか。
今日は、和田先生から原稿をいただく日だからな。


【昼】


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コメント

_ haru ― 2011-03-27 17時02分43秒

諸星家のお父さん、仕事も家族も大切にするいいお父さんですね。
そっか、編集マンだったのか。。。
困ったね、和田周作先生は、原稿書いてないんだよー。編集マン泣かせだね。
なんだかんだ言い訳して、若い奥さんと朝からいちゃついてる。
あ~ぁ。教えてあげたいけど教えられない。
桃ちゃんのウィキペディアをライバル視する頭をもってしても……
そうだ!新明解国語辞典第4版に、作家先生に原稿を書かせるマニュアル載ってるかも。
……載ってるわけないだろ!!
あ、ここは幸福操作官に原稿依頼するのがベストだよ。
お母さんの巨乳チョットだけ触らせてやるって言ったら喜んで書いてくれるカモネー。。。??

どんどん、人と人が繋がり、交わってきましたね。海のずーっと向こうにおぼろげながら島が
見え隠れしてきましたよ。(*^-^)ファイト!

_ 矢菱虎犇 ― 2011-03-27 17時40分04秒

ああ、懐かしい!ラジオ体操の歌だ。
ラジオ体操自体の曲以上に、インパクトのある能天気に明るい曲で、大好きです。
笑いとばすって感じに近い、歌いとばすみたいなアッケラカ~ン!
♪それ、イッチ、ニィ、サ~ン♪

_ haruさんへ ― 2011-03-27 20時50分47秒

人間って個人的な生き物でなければならないと思うんです。
個人的に。
集団があって、ボクらはその中で、保証されている。
それは、まるで朝飯前の当たり前のことだけれど、いったいその保証は
本物なんだろうか?
大家族は、現代の家族制度の中でも珍しい。
だけど、個人的には、このお父さんは、ただのサラリーマン。
haruさんは、そういうことをボクに考えさせてくれます。
ありがとございます。
個人的に(笑)

_ 矢菱さんへ ― 2011-03-27 20時55分41秒

>ラジオ体操の歌だ。
そうなんです。
ボク、この歌、好きなんですよ。
>ラジオ体操自体の曲以上に、インパクトのある能天気に明るい曲
だから、好きなんでしょうね。
能天気!
これは、いろいろと励まされるキーワードですよね。
がんばろう! とか、そういう他人事なのに偽善的に連発する
キーワードより、ボクは能天気の方が好きです。(笑)

_ りんさん ― 2011-03-27 21時40分48秒

きれいな空の写真見ました~^^

諸星さん、子だくさんですね。
桃子ちゃんは、ウィキペディアがライバルの子ですよね。
みんなでラジオ体操するんだ。
歌まで歌って(笑)
なかなかいいファミリーじゃないですか。

_ おりんさんへ ― 2011-03-28 09時03分18秒

大家族の連帯感ってのは、そこの主人の強引さに比例するところがある
って、思えてならないんです。
両親の苦労を知ってるから、我儘を我慢する子供たちっていう
ちょっと貧乏な感じ。
それと同時に、あまり相手にされていない子供は
ちょっとした反抗期が長く続いています。
ちなみにボクは核家族です。(笑)

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