【朝】


『普通の女の子コンテスト』
ママ、ちゃんと申し込みしてくれたかなあ？
いつもギリギリなんだから。

それもそうだけど、まずは明日のオーディションに向けてレッスンだ。

明日は、泣く演技っていうのもあったんだよね。
理沙、あんまり泣いたことないから、どうしたらいいかわかんないんだよなあ。

悲しいことを思い浮かべたら、涙って出てくんのかなあ？
・・・・・・悲しいこと・・・・・・悲しいこと・・・・・・。

うーん。
悲しいことなんて、なんにもないや！
悲しくなくても涙が出てきちゃう方法ってあるのかなあ？

今晩、ダイキチ先生に聞いてみよっと。

歌だけじゃなくて、演技力も必要だものね。
ダイキチ先生なら、あの後藤みづきを発掘したんだから、
きっといいアドバイスしてくれそう。

まずは、島ドルの後藤みづきを超えなくちゃ。
あっちは、グラビアから、アイドルになったけど、理沙は違うもん。
歌で真っ向勝負なんだから！

そんで、最終目標は、世界のマリリンを超えて、世界一のアイドルになるの。
そしたら、クラスのお友達もビックリしちゃうだろうなあ。

だって、いつもの教室に世界一のアイドルがいるんだもん。
あ、そういえば、今日、学校に転校生が来る日だった。
どんな子かなあ？

泣き虫だったら、いいなあ。
そうすれば、どうやったら泣けるか、コツを教えてもらえるんだけどなあ。

「理沙、今日はカラオケに行って、オーディションのための特訓するわよ。大吉先生が来てたら、また教えてもらうから。で、それができたら、今夜は、前祝にパパのお店で外食しましょ！」

やったあ！

「だけどママ、パパのお店って高いんでしょ？」

「そういうのを気にしてたら、アイドルにはなれないのよ、理沙。どうせパパのツケにするんだから、気にしないの」
ツケ？
ツケってなだろう？
まいっか。

「それじゃ、理沙、オーディション用の衣装に着替えて、本番さながらの練習するわよ！」

「え？　もう衣装着てもいいの？」
「そうよ。着慣れてないといけないでしょ。そのかわり、汗じみとか作っちゃダメよ。アイドルは、汗をかかないもんなの！」

｢やだ！　パパ！　見ないでよ！　あっち行って！　信じらんない！｣
もう！
パパったら、アイドルの着替えを覗くなんて～！
あ、そっか。
こういう時に泣けなきゃ、ダメなんだよね。
よーし。

「うえーん、うえーん。パパのバカー！　うえーん」
「理沙、うそ泣きもうまくなったじゃないか」

あ～あ、ばれちゃった。


【昼】


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