【朝】


ネイルアートって、地味な作業の連続だけど、
完成するとハデなものになるから、好き。
小さな箱庭を作ってるみたいで、努力が報われるって気持ちいい。

みんなは、完成品を見て、評価するけど、技術っていうのは
前面に押し出すものじゃないから、その価値がなかなかわからない。
その気づかれないところに、真価があるんだわ。

「麻衣、おはよごぜーます」
「おはよ、ボブ」
ボブはもうすっかり日本人ね。

「オウ、麻衣、今日もナイスな爪だね。日本の女性は器用ですね」
ボブは、ホント、口がうまいんだから。
こうやって、他の女も口説いたりするんだわ、きっと。

どうして、アメリカ人って、女と見れば見境なく口説き散らすんだろう？
お国柄？

「ボブ、この前、バーでお客さんのこと口説いてたでしょ」
「く、口説いてナイよー」

「じゃあ、どうしてお客さんとの顔の距離が１０センチしかなかったの？　わたし、ちゃんと計ったんだから」
ボブ、浮気したら、わたしボブと道連れに心中しちゃうから。
マニキュアのアルコールに火をつけて・・・・・。

「麻衣、ボブはホントに浮気なんてしてナッシングだよ～」
まあいいわ。
でも、ちょっとでも気を許したら、ボブはすぐに浮気するはず。
こうやって、隙間隙間にささやくことで、浮気を防止できるのよ。

《ピピピピ・・・ピピピ・・・ピピピ・・・ピピピ》
「あ、ハロハロ～」

ん？
ボブに電話？
こんな朝早くから。
誰？
女？

ずいぶん楽しそうな話っぷりね。
あ、こっちをチラ見した。
あの目。
やっぱり相手は女ね。
ってことは、この前のバーの女？
いつの間にアドレス交換してた？

「ボブ、誰から電話？」
もし、浮気してたら、この場で・・・・・・。

「オウ！　麻衣、スゴイ怖い顔して・・・・・・。あ、今の麻衣のママさんから衛星通信だよ。あと、半月くらいしたら、パパさんと一緒に一旦、地球に帰って来るってサ」
え？
ママ？

もう、木星探査から帰ってくるんだ。
早かったなあ。
これで、またボブと別々の生活か。
せっかくお互いをわかり始めたっていうのに。

「ママ、なんか言ってた？」
「エウロパで発見された地球外生命体の写真を撮ったっから、ネイルアートの資料にすればいいって言ってたヨ」
また、地球外生命体かあ。

「ボブ、わたし学校に行くけど、わたしが学校行ってる間も、知らないところで浮気しちゃダメだよ。定期的にメールしてね」
「イエッサー！」

「・・・・・・それから、学校終わったら、カラオケに行きましょ」
「イエッサー！」
ホントにわかってんのかしら？

「じゃあ、行ってきま～す」
「オウ！　麻衣。キスミー！」

チュッ！


【昼】


本日も、読んでいただきありがとうございます。
ヴァッキーノは、にほんブログ村の村民です。
１日１回、ポチッとクリックしていただけたら、大喜びです。
　　　　　↓

にほんブログ村