田村 恵(20歳)2011-08-03


【朝】

【昼】


「いらっしゃいませ〜。お一人様でしょうか?」
この人、喫煙席っぽいけど、禁煙席かな?

「おタバコ、お吸いになられますか?」
どっちだろう?
「はい。吸います」
「それでは、お席までご案内いたします」

「カルボナーラひとつね。食後にコーヒーもちょうだい」
「かしこまりましたあ。ご注文を繰り返させていただきます。カルボナーラがひとつ。食後にコーヒーがひとつ、ですね?」

この人、どっかで見たことあるなあ。
なんかの飲み屋のママだったような・・・・・・。
はあ、そんなことどうでもいいや。

ヒデちゃん。
バンドの練習、サボんないで、行ってくれないかなあ。
でも、私があんまりしつこく言うと、ヒデちゃん、怒るからなあ。
ヒデちゃん、私、しつこいかなあ?

「・・・・・・恵ちゃん、注文は?」
「あ、すみません、関さん! カルボワンとコーヒーワンです」
ああ、考え事してたら関さんに注文のこと言うの忘れちゃった。

でも、関さんって、エライわ。
ボクシングに懸ける夢って、ただならぬモノを感じるもの。
暇さえあれば、腕立てや、シャドーボクシングに余念がないし。
ヒデちゃんも、見習って欲しいんだけどなあ。

そんなこと、言えないけど。

「恵ちゃん、どうした? カルボワンあがったよ。ボーっとしてないで、お客さんに持ってって」
「あ、関さん、すみません!」

わあ、大変!
冷めちゃう冷めちゃう〜。
サラダと、フォークとスプーンっと。

「お待たせいたしました。カルボナーラでございます。ごゆっくりどうぞ」
ふう、危ない危ない。

「ねえ、あなた。ちょっといいかしら」
え?
私?
なんかしたかな?

「はい、お客様」
「・・・・・・あなた、ウチのお店で働いてみない? ウチね、『モンローウォーク』っていうキャバクラなんだけど。今、働いてくれそうな、若くて世話好きそうな娘を探してたの。あなたなら、なんかバッチリ合いそうな気がするんだけど。・・・・・・どう?」

え?
これって、ヘッド・ハンティング?
ちょっと待って、冷静にならないと。
「・・・・・・夜のお仕事ですか?」

「そう、だけど、ウチは比較的ラクだと思うけど。 ま、時間があるときでいいから、話だけでも聞きに来てちょうだい。名刺渡しておくから」

『キャバクラ・モンローウォーク』
代表取締役 斎藤好恵

どうしようかなあ。
困っちゃうなあ。
この場は、ひとまず引き下がろう。
「かしこまりました。考えさせてください」
「そうね」

関さんに相談してみようかな。
「関さん、さっきあそこのお客さんから、名刺もらっちゃったんです。ウチの店に来ないかって」

「・・・・・・そっか。恵ちゃんが、行きたいと思ったら、おれは反対はしない。それが、恵ちゃんにとって、最良の選択だと思うからだ。だけど、レッドウッド・カフェが好きなら、おれとしては、ずっと働いていて欲しい。恵ちゃん、君に夢はあるかい?」

「夢・・・・・・ですか?」
夢・・・・・・。
なんだろう。
ヒデちゃんをバンドの練習に行かせて、みんなと仲良くなってもらうことかな。

「そう、夢。・・・・・・夢なんて、持ってるヤツが可哀想だよ。現実にならないから、夢を追い続けるわけだろ?」
「まあ、そうですね」

「夢なんて、いらないんだぜ。おれは」
「夢を持ったら、どうしていけないんですか?」
「叶うとか、叶わないとか、そんなハンパなことじゃ、先に進めないってことさ。ボクサーってのは、そういうもんだぜ」

すっごーい!
かっこいい!
関さんって、ストイックだなあ。
ヒデちゃんも、こういうふうになってくれたらなあ。

今日こそ、どうしても練習に行ってもらおうっと。
ゼッタイ!
これは夢じゃないんだから。


【夕】


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コメント

_ もぐら ― 2011-08-04 00時05分20秒

わーいヴァッキーノさん ありがとうございます。
恵ちゃんだ。
そうそう前向きにがんばってーって応援したくなりません?
幸せになってほしいな。ねぇ?ヴァッキーノさん♪

_ haru ― 2011-08-04 08時05分02秒

えー!(コホン) 私が思いますに、とかく若い女は男本人より、夢を追いかけている所にに引かれる傾向があるようです。母性本能が強ければなおのこと。自分がなんとか支えようとか、おもうようですね。
そして、男の夢が叶った時にその感情は頂点に達し、あとは転げるように降り坂。
この辺りが、男と女の難しいところでしょうね。(haru辞典より一部抜粋)( ̄ー ̄)ニヤリ

_ 矢菱虎犇 ― 2011-08-04 09時37分11秒

関さん、カッコイイ!
っていうか、恵ちゃんに気があるみたいだな。
減量中に、お店でカルボナーラを調理・・・なんか自虐的な感じすらしますねぇ(笑)
モンローウォークのママ登場、えっとどんな人だっけ?・・・こんなふうに次々と交錯していく・・・推理小説でも何度も登場人物を忘れてしまう僕としては、トップページのリンクが欠かせません。

_ りんさん ― 2011-08-04 18時48分37秒

関さんも恵ちゃんが好きなのかな。
恵ちゃんはホントにいい子で、みんなに好かれるけど、自分の夢を持たなきゃダメですね。彼の幸せが自分の幸せだなんてね。
ヒデちゃんも、いつまでもだらしないと誰かに取られちゃうね。
関さん急接近…だったりして。

_ もぐらさんへ ― 2011-08-04 20時37分24秒

恵ちゃんにとってのしあわせってのは、
やっぱヒデなんでしょうね。
こんなに思われてるのに、冷たい態度だと
恵ちゃんがかわいそうですよね。
これからも応援よろしくお願いします!

_ haruさんへ ― 2011-08-04 20時40分35秒

幸福にも絶頂期ってのがあるんでしょうね。
男の夢を叶えてあげたいなんて女性は
素晴らしいなあって思うんですけど
男の夢なんて、結構、子供じみててくだらないものが
多いですよね。
ちなみにボクの夢は、総天然色ウルトラQの
ブルーレイが欲しいってことです。
そうです?
くだらないでしょ?

_ 矢菱さんへ ― 2011-08-04 20時42分44秒

>推理小説でも何度も登場人物を忘れてしまう
そうなんですよね。
実際、名前は覚えてないっていう方が多いですよ。
顔や、声は覚えてるんです。
でも、名前が出てこない。
そういうのを解消するアプリとかないかなあ。

_ おりんさんへ ― 2011-08-04 20時45分18秒

>自分の夢を持たなきゃダメ
なんだか、頼れる姉貴的なセンパイに
恵ちゃんが本当に説教されてるみたいですね(笑)
でも、考えてみると、恵ちゃんってモテモテですよね。
周りにいる男がみんな好意的ですもん。

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