儚い預言者様の「穴」2010-07-07


 あなたは勘違いしている。そして私は気が振れている。正気というのは、狂気の内に存在するように、反転する宇宙には、壺とその位置は余りにも相対的である。覗き見る穴の暗黒に、自分の視線を感じるのは、そういうことなのだ。実際、宇宙は唯一のものであるから、反対が在る訳でない。もしそうであるならば、恐ろしく高等に「目」と「視線」の行方を占わなければならない。

 町並みが美しく雨の煌きに反映して、地面の濡れた妖しさが地上に滲んでいく。生活の濃厚な漂いの中で、人々は歴史の一断面を継続させていた。

 ふと、そこには在り得ない穴があった。嘘であることがどれほど重要であるかを示すように。本来には絶対に無い続き物の世界に、何の関連もない暗黒が世界に現れたのだ。断絶、深遠、深謀、不慮、未知、投影などの象徴がそのままに、ただ穿っている。

 疑いは本来正直なものであるが、この穴に関しては、絶対論を掲げる理想に燃えているかのように、暗黒への「存在」いや、「無存在」を惚けているのである。

 事は易しい。がその一瞬が、全てを覆うのである。だから「穴」というのは、感知すべき領域ですらないのに、知悉すべきであるかのように訴えているのは、何か理由があらざるを得ないという結論に導きだせるのであろう。

 「ここには真実がある」。と少年が言った。

 皆は最初無視していたが、一人、二人と、その十字架の痣がある少年が、確信さと素直さのバランスを体現していると感じられて、ある領域を超えた不可思議に通じているのではないか、いやそうであるに違いないと、皆の総意になりつつあった。

 「私は知っている」。と少年が言った。

 すでに皆は次の言葉を待つように、静謐に促されていく。

 「そしてあなたがたも知っているのだ」。と少年が言った。

 総ての聴衆が唸りのような合図を波打たせて、その疑問符を少年に向けた。

コメント

_ 儚い預言者様 ― 2010-07-07 22時32分07秒

あっひー!
お久しぶりです!
儚い預言者様からも投稿してもらえたら、
もう、これは文章塾ですね!
しかも、おさかさんの「穴が開いた」への問いかけのような
答えのような。
文章塾が終って、それでもなおエネルギッシュギルガメッシュな
預言者様にホッとしてます(笑)

_ tatsu ― 2010-07-08 00時45分30秒

読めば読むほど良く分かりませんが
何やら有り難いもののようです。

ありがたや、ありがたや~。

_ tatsuさんへ ― 2010-07-08 05時17分54秒

この作品は、ずっと前にやってた文章塾という塾で懇意にさせていただいてた儚い預言者様が書かれたものなので、
なんともオリジナリティあふれかえる作品になってます。
はじめて読まれる方は、心してかからないと
儚い預言者様の迷宮に引きずり込まれてしまいます(笑)

_ おさか ― 2010-07-09 16時41分38秒

↑上の一連のコメントで爆笑
何といいますか、預言者様のスパイスがかかるといつでも何処でもかつての文章塾テイストと化すような(笑)。

意味を掴もうとするとぬらりくらりと逃げられてしまうので、半眼半身で寄り添うのがよろしいかもしれません。なむなむ(違)。

_ おさかさんへ ― 2010-07-09 18時36分47秒

こうして、お題に添ってみなさんがいろんなお話を
書いたものを並べると、なんとも文章塾チックになりますね。
しかも、儚い預言者様の作品もあるんですから!
これで、ぎんなん姉さんや、コマンタさん、ちょーこさん
つとさんも登場したらすごいなあ。
もちろん木の目塾長も!(笑)

_ 矢菱虎犇 ― 2010-07-19 22時16分49秒

儚い預言者さまへ
連休中に穴巡りをする予定だったのに、いつの間にか終わろうとしています。何だか夏休みの終わりに宿題を山積みしている気分です。

とても論理的に語られているようで、組み立てられた言葉を解体してから再構築されているようで、まさに「穴」という感じです。
まるで「穴」が神的存在に思え、少年が預言者様に思えてくる感じです。これまでの「穴」とはまた違う、迷宮のような穴だなぁ~

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